預金口座を複数の金融機関に開設している人も多いとおもう。とくに,ペイオフの対象となる預金残高が1金融機関元本1000万円までとなってからはなおさら取引金融機関が増えた人も多いかと思う。
預金口座の管理という点からみるとネット銀行を利用する人も増えていることも見落とせない。
さらに,日本には窓口を持たない外国銀行に口座を持つ人も相当数いると考えられる。
口座開設金融機関を分散して預け先の倒産などに備えるにはまことに理にかなっている。ところが,いったん相続が発生する,あるいは,口座開設したご本人が財産管理能力を失ってしまい成年後見人がつかざるをえない場面では,悩みの種となる。
まず本人が取引していた金融機関を特定しなければならない。通帳や金融機関の連絡はハガキを頼りに問い合わせる。こうしたことで大概の取引のある金融機関はわかるのだが,問題はネット銀行である。口座開設時の書類以外には現物のものは本人の手元には存在しない。全てのやりとりはメールによって行われる。こうしたことから取引金融機関の調査から漏れてしまうことがありうる。
本人がしっかりしているときに概略を家族の者に伝えるなどの工夫をする必要がある。相続であれば遺言書を残すなども一つの方法だ。
こうして取引先金融機関がわかったなら,成年後見であれば昨日のブログに述べた書類を揃えて届出を行う。相続であれば遺産分割協議書などの書類を揃えて銀行に手続を請求する。
外国に口座がある場合はどういう手続になるのだろうか。一例を挙げると次のような書類が必要になる。
1.銀行の預金通帳
2.後見人及び被後見人両者のパスポート
3.本人(被後見人)の英語での診断書
4.公証人が発行する成年後見人証明書の原本とその英訳
5.その原本を英訳した文書に対する外務省発行の翻訳証明書
6.法定後見制度に対する弁護士の意見書とその英訳(成年後見人制度のない国の場合)
いかがだろうか。よほどの高額な預金ならこうした書類を揃える価値はあろう。しかし,そうでない金額の場合は気が滅入ってしまうのではないだろうか。
相続の場合については調べてはいないが,おそらく似たり寄ったりの手続を要求されるであろう。
以上のような事情を念頭に置くと本人が精神的にも,肉体的にも健全なうちに万一の場合を想定してご家族などの利害のある者に伝える工夫が必要ではないだろうか。
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