農地を借りたり,もらったり,買ったりするときには農業委員会の許可を受けなければならないという制限があるのはご存じでしょうか。
営農者でない者に農地が渡ることは農地の保全上好ましくないとの趣旨による制限だと思われます。
それでは親元を離れてサラリーマン生活を送っている者(非営農者)が田舎の親の農地を相続したときの取扱いはどうのようになるのでしょうか。
1遺言がない場合。
遺産分割により農地を取得したときには農業委員会の許可はいりません。
相続時には許可はいりませんが,その後もし売却をする場合は当然農業委員会の許可が必要になります。
2遺言があり,相続分の指定がなされている場合。
農業委員会の許可はいりません。
3遺言があり,遺産分割方法の指定がなされている場合。
農業委員会の許可はいりません。
4遺言があり,遺贈がなされた場合。
遺贈というのは自分の財産の一部を他人に与えることをいいます。なお,遺贈を受ける他人には法定相続人も含みます。
遺贈には二種類あります。
遺産の割合で示す遺贈を包括遺贈といいます。たとえば「Aにはすべての財産のうち4分の1を与える」というような記載のあるものです。
遺産のうちの特定の財産を他人に与える遺贈を特定遺贈といいます。たとえば全部で3筆ある土地がある人が「Aに農地甲を与える」というような記載のあるものです。
(1)包括遺贈の場合。
農業委員会の許可はいりません。
(2)特定遺贈の場合。
行政上の実務では農業委員会の許可が必要だとしているようです。
判例は特定遺贈の場合はすべて許可が必要とするもの,相続人にたいする特定遺贈は例外として許可が不要とするものとに別れています。
以上見てきましたように,相続の仕方によって農業委員会の許可が必要だったり,不要だったりします。遺言作成時に農業委員会の許可が必要・不要の観点からの検討もしておいた方が望ましいでしょう。
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