前二回の説明で遺産分割協議をしないままひとりの人間に相続財産を使われていても(占有されても)通常は相続財産を失うことはないという説明をしました。
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それでは,一部の相続人を除外して半ば無理矢理に相続財産を分けてしまったとき,仲間はずれにされた相続人はその相続財産を時効によって失ってしまうか。このことを今回は考えてみます。
前回の話しは相続財産を自分の手元に置いて使っている場合が典型例です。今回は,相続原因として自分の名義に登記変更をして使用だけでなく自分のものであるという主張を対外的にする場合がこの典型例です。
民法844条に相続回復請求権という規定があります。相続権を侵害された者はその事実を知ったときから5年以内に文句を言わないと時効によってその相続財産を失うといっています。
これがそのまま適用されると強引に自分のものだと言い張った者が得をするということになりかねません。気の弱い者は泣き寝入りの憂き目に遭うことになってしまうかもしれません。
こうした不合理を避けるために最高裁判所は相続回復請求権の消滅時効の主張を次のように制限しました。ア相続財産の一部が他の相続人の持分に属することを知っている。イ知らなかったとしても知らなかったことに合理的な理由がある。この2点を消滅時効を主張する者が立証しなければならないとしました。
(最高裁判決昭和53年12月20日)
この判決により相続人間で相続回復請求権の消滅時効を主張するのは難しくなっています。
相続においては占有による取得時効の主張,相続回復請求権の消滅時効の主張もともにかなりまれな場合に限られるということになります。
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