以下の3点セットがあれば在宅死は可能だとわかってきました。
第1に本人の意志。家にいたいという、はっきりした意志です。それがないと日本では家族が代わって判断することになります。第2に本人の意志だけでは不十分で、同居家族がいるうえに家族が同意してくれることです。しかも、その家族に介護力があること。気持ちはあっても、老老介護で共倒れになりそうなら無理です。
第3にお金があること。介護保険の要介護5で1ヵ月の利用限度額は最大36万円前後*ですが、これは末期の看取りに十分な額ではありません。つまり、もうひと踏ん張り自己負担できるお金が必要だということです。
*東京23区の場合、大都市加算がある。
「在宅死」のための3条件
上野千鶴子さんさんによると「在宅死」のための条件は次の3つだといいます。
1,本人の強固な意志
2.同居家族がいて,その同意があり,かつ家庭に介護するマンパワーがあること
3.お金があること
かなりハードルが高いような気がしますが,「おひとり様の老後」で有名な上野千鶴子さんによれば,同居家族がいなくても,それほどお金がなくてもやりようによっては可能だといいます。1さえあれば,2と3は工夫次第でどうにかなるといいます。
「在宅ひとり死」
家族のいても在宅で死を迎えるのは容易ではないのですが,支える家族なしでも在宅で死を迎えることができると上野さんは考えています。
「在宅ひとり死」は家族でない人達に支えられて最期を迎えること。毎日誰かが随時様子を見に来ます。そして,いつの日にか,次に誰かが訪ねてきたときにはすでに亡くなっています。これは仕方がないことなのでしょうか。幸せな「在宅」と呼んでいいのでしょうか。
孤独死と看取り死
「孤独死」とは訪れる人もなく,亡くなっているのが偶然発見されることをいいます。「無縁社会」という言葉が有名になりました。「看取り死」とは死期の瞬間を愛する人に見とれながら亡くなる死に方をいいます。一時代前はこれが一般的な死の迎え方でした。枕元に家族が集まって最期の別れをしました。今でも,ドラマではよく出てくるシーンです。
在宅ひとり死は幸福か
「在宅ひとり死」は「孤独死」と「看取り死」の中間の位置を占める死に様ということになります。価値観はそれぞれでしょう。孤独死が幸せでないともいえないかもしれません。看取り死が本人の本望ともいえないかもしれません。とくに在宅ひとり死が幸せだとはいえません。
本人が望む死に様を提供できる体制を整えるのが,次の世代の人間の責任ともいえます。すくなくとも,本人が幸せでもないと感じている死に様を,いかにも幸せな死に様だと言いつのるのは好ましくはない気がしてなりません。
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