1.後見人候補者
後見の申し立てをするときに,申立人は後見人候補者を同時に指名するのが普通です。申立人としては誰を後見人として希望しているのか,家庭裁判所は申立人の意見を聞くわけです。後見人を誰にするのかは,家庭裁判所が最終的に判断します。
申立人があげた後見人候補者でない人を後見人として適任だとする場合が出てきます。この場合に,申立人は納得できないという気持ちを抱くことがままあります。「あの人間が後見人になるのなら,成年後見の申立てをなかったことにした」とご相談にみえる方がいらっしゃいます。
2.後見開始の審判の申立の取り下げは可能か
いったん申立をおこなった後は,申立人が自由にその申立を取り下げることができない決まりになっています。家庭裁判所との打合せなどを通じて,申立人が希望しない人が後見人に選ばれそうだと予測できる場合でも,家庭裁判所の許可がなければ申立を取り下げることができません。
申し立てる申し立てないかは申立てができる四親等内の親族の自由ですが,いったん申立がおこなわれるとその取下げは自由にはできないのです。これは,いったん申し立てられた以上はその後の審判については本人の保護が最優先されるという考えに基づいているようです。
後見開始,成年後見人選任の申立の取下げは,家庭裁判所の許可がなければできませんが,保佐,補助の申立についても同様です(家事審判手続法121条,133条,142条)。
参考ブログ:「後見開始の申立ては勝手に取り下げることができなくなりました。」
3.家庭裁判所の審判に対する即時抗告
家庭裁判所の審判(判断)について,申立人は抗告する(文句を言う)ことができます。
申立人がおこなう抗告として想定されるのは次のふたつが考えられます。
①成年後見の必要がないとした審判について,成年後見は必要だという異議を申し立てる。
②成年後見の必要があり,後見人候補者以外のものを後見人に選任するという審判について,異議を申し立てる。
①の抗議はできますが,②の抗議はできません(家事事件手続法123条)。つまり,家庭裁判所が選んだ後見人が申立人の気に入らなかったとしても,そのことに文句を言うことはできないと言うことです。
4.まとめ
家庭裁判所が後見を申し立てたのに,後見の必要がないという判断をしたときには,申立人は抗告して文句を言うことができます。しかし,家庭裁判所が選んだ後見人が申立人の希望に添わない人であっても抗告して文句を言うことはできません。
審判の結論が出る前であっても,成年後見の申立てをいったんおこなったならば,申立人といえども勝手に取り下げることはできません。
後見を申し立てる前にこのことも十分検討した上で,申立をおこなう方がよいでしょう。
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