前回前編の続きです。
前編:非嫡出子をめぐる遺産相続の概要
今回は,嫡出子から見た相続処理における非嫡出子(いわゆる隠し子)への対応について考えていきたいと思います。
具体例として,嫡出子Aと非嫡出子Bが法定相続人であり,公正証書遺言により嫡出子Aにすべての財産が遺贈されたというケースを想定してみて下さい。
一 非嫡出子の親の死亡への関知
非嫡出子(いわゆる隠し子)は一般的には親と同居していないことが多いと思われます。また,家族の手前もあり,生前において非嫡出子との交際はごく限られていると思われます。
非嫡出子は,親が死亡したということを知る機会は限られています。
一方,嫡出子は親と同居していたり,折に触れて親子の接触がなされるのが通例です。
二 嫡出子などから非嫡出子(いわゆる隠し子)への連絡
1 遺産分割協議が必要な場合
遺産分割において遺産分割協議が必要でない限り非嫡出子(いわゆる隠し子)への連絡は実質上必要はありません。
遺産分割協議が必要な相続では,相続人全員の協議が必要となりますので非嫡出子(いわゆる隠し子)に相続開始を知らせる必要があります。
2 遺言書の検認が必要な場合
遺言書の検認手続がおこなわれると自動的に家庭裁判所から相続人全員に相続が発生して遺言書の検認を実施する旨の通知が出されます。この通知によって非嫡出子(いわゆる隠し子)は親のが死亡して相続が発生したことを知ることになります。
三 相続発生を非嫡出に通知せずに相続が完了する場合
非嫡出子(いわゆる隠し子)の親の死に関知させずに相続を完了させるには
①遺産分割協議が必要ではない
②遺言書の検認手続によって非嫡出子に相続が発生したことが通知されない
と言うことが必要です。
つまり,遺言が公正証書によってなされるとともに,その遺言の内容が非嫡出子抜きで執行できるものであればよいことになります。
四 非嫡出子の遺留分減殺請求権と時効
非嫡出子(いわゆる隠し子)には遺留分があります。
親が死亡したことを知らずにいると遺留分減殺請求権は十年で時効となってしまいます(民法1042条)。
遺留分減殺請求権というのは,遺言の内容にかかわらず,兄弟姉妹を除いた法定相続人が最低限要求できる相続分のことを言います。
嫡出子側の家族の立場からいえば,隠し子に親の死を知らせずに無事に十年がすぎれば,隠し子から遺留分の請求をされなくて済むわけです。隠し子との交流が疎遠であることを幸いに相続の開始を教えないということが十分考えられます。
五 まとめ
遺産相続手続に非嫡出子(いわゆる隠し子)の協力が必要ないのであれば,わざわざ連絡をする必要はないわけです。
非嫡出子が親が死亡して相続が開始したことを知らないままに十年が経過すれば,非嫡出子の遺留分減殺請求権にかかわらず時効によってまんまと非嫡出子を財産相続から排除できることになります。
逆の立場に立てば,非嫡出子は定期的に親の戸籍を取り寄せるなどして親の現況を確認することが大事になります。
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