確定申告の時期です。今回は成年後見人の報酬についてみていこうと思います。
1 成年後見人の報酬の計上時期
①成年後見人の報酬は,人的役務の提供にあたります。
②通達によりますと「人的役務の提供による収入すべき時期は、役務提供を完了した日が原則とされています。ただし、人的役務の提供による報酬を期間の経過等に応じて収入する特約又は慣習がある場合におけるその期間の経過等に対応する報酬については、その特約又は慣習によりその収入すべき事由が生じた日とされています(所基通36-14(2)、36-8(5))。」
③通常,成年後見の役務提供を完了した日とは,成年被後見人が不要となる時つまり成年後見人の死亡日などになります。
④しかし,家庭裁判所の審判による成年後見人への報酬は,通達のただし書きににある通達の「期間の経過等に対する報酬」にあたります。
⑤つまり,成年後見の報酬の収入計上時期は,家庭裁判所の報酬付与審判の通知がされた日となります。
(名古屋国税局文書回答 成年後見人が受領した報酬に係る収入金額の収入すべき時期)
https://www.nta.go.jp/nagoya/shiraberu/bunshokaito/shotoku/150122/01.htm
家事事件手続法74条(審判の告知及び効力の発生等)
2 成年後見人の報酬
(1)家庭裁判所の報酬付与審判
①報酬付与審判の申立人
報酬付与の申立てができるのは,成年後見人です。
親族後見人も報酬付与審判の申立てができます。また,扶養義務のある親族後見人も報酬付与審判の申立て報酬を受けることも可能です。
②報酬額
後見人の報酬については民法の862条に規定があります。家庭裁判所は,後見人及び被後見人の資力やその他の事情を事情に応じて,被後見人の財産から,相当な報酬を後見人に与えることができると規定されています。
なお,専門職の標準的な報酬額の目安が,東京家庭裁判所から「成年後見人等の報酬額のめやす」として公表されています。
基本報酬 月額2万円
被後見人の財産が1千万円超5千万円以下の場合は月額3万円から4万円
被後見人の財産が5千万円超の場合は月額5万円から6万円
http://www.courts.go.jp/tokyo-f/vcms_lf/130131seinenkoukennintounohoshugakunomeyasu.pdf
③不服申立て
この報酬の支払いは,後見人の権利(報酬請求権)ではなく,家庭裁判所の裁量によっています。
支払いを認める・認めない,認めるとしてその金額がいくらであるかという家庭裁判所の審判に対して,不服申し立てをすることはできません。
家事事件手続法39条(審判事項),別表第1の13項,123条(即時抗告)
④その他
保佐人・補助人・成年後見監督人・保佐監督人・補助監督人についても成年後見人にの報酬支払いに準じた取扱になります。
3 まとめ
①成年後見人の報酬は権利ではありませんが,家庭裁判所に報酬付与審判の申立てを行うことによって,成年被後見人本人の財産から報酬を受けることができる可能性があります。
②その報酬の計上時期は,家庭裁判所の審判の通知を受けた時になります。
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