遺産分割協議は相続人全員の参加が必要であることは,何度かお話ししています。相続人のうちの一人でもその協議に加わっていなければ,遺産分割協議は無効です。
相続人の中に行方がわからない人がいた場合には,遺産分割協議はどうなるのでしょうか。今回はそのことを考えていきたいと思います。
1.相続発生時に相続人に行方不明者がいる場合
(1)不在者財産管理人(民法25条)
他の相続人などの利害関係者からの請求により,不在者財産管理人を家庭裁判所が選任します。
選ばれた行方不明の相続人の不在者財産管理人は,家庭裁判所の許可を得て,他の相続人と遺産分割協議を行います。
(2)失踪宣告(民法30条)
不在者が7年以上生死不明の状態が続いている場合には,家庭裁判所が失踪の宣告を行います。法定相続人などの利害関係者の請求により,家庭裁判所が行います。
失踪宣告がなされますと死亡したとみなされます。
代襲相続をする者がいるときには,その人が相続人となって遺産分割協議に参加します。
2.遺言がある場合
(1)遺留分侵害のない遺言
遺言がある場合には,遺言にしたがって遺産分割がなされるので,遺産分割協議の必要はありません。
(2)遺留分侵害がある遺言
遺留分の侵害がある場合には,侵害された相続人は遺留分減殺請求ができます。法定相続人に最低限認められた相続分を渡すように請求することを遺留分減殺請求といいます。
遺留分減殺請求権には消滅時効がありますので,一定期間が経過すれば行方不明の相続人は遺留分を請求することができなくなります。
消滅時効の期間は以下のとおりです。(民法1042条)
①相続の開始及び遺留分減殺請求ができる贈与又は遺贈があったことを知ったときから1年間で,それを過ぎると遺留分減殺請求権は消滅します。
②相続開始の時から10年を過ぎると遺留分減殺請求権は消滅します。
この10年は除斥期間と呼ばれ,ともかくも10年がたてば遺留分減殺請求権は消滅します。時効の中断ということはありません。
3.まとめ
推定相続人に行方不明者がいる場合には,遺言を残すことを検討するべきです。遺言があれば,遺産分割協議の煩わしさから法定相続人は免れることができます。
相続開始から10年以内に遺留分減殺請求がなければ,遺留分減殺請求権は消滅します。
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