前回,マイナンバー(個人番号)の「通知カード」の管理に関する責任を考えてみました。
「マイナンバー(個人番号)「通知カード」の管理の責任・その用途」
今回は,マイナンバーそのものの漏洩,提示の責任を考えてみようと思います。
1.マイナンバーの提示
(1)マイナンバー提供禁止の原則
マイナンバーの提供は原則禁止されています。定められた場合にのみそれが許されます。
番号法19条(特定個人情報の提供の制限)
注:番号法は「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」の略称です。
特定個人情報とは
①マイナンバー
②マイナンバーを含んだ個人情報
③マイナンバーではないがそれに代替する番号なども含む
個人番号法2条8項,37条。
(2)提供禁止に違反の場合
認められた以外の場合の提供は番号法の違反となります。
①インターネット上へのマイナンバーの公開
このことに関連して,ある男性がネット上にマイナンバーを公開して、騒動になりました。
公開先ページ:http://sayuflatmound.com/?p=17808
このマイナンバーの公開について,特定個人情報保護委員会事務局は,「インターネット等におけるマイナンバー(個人番号)の公表に対する注意喚起」の文書を発表しました。
ア 番号法第19条の提供制限に違反する可能性がある。
イ これを見た他人が、インターネット等において公表されているマイナンバー(個人番号)をプリントアウト等して収集した場合には、番号法第20条の収集制限に違反する可能性がある。
と注意を喚起しています。
②罰則
ア 提供制限違反
番号法19条(特定個人情報の提供の制限)についての義務違反への直接の罰則はありません。
違反行為をやめるように特定個人情報保護委員会から勧告を受けたにもかかわらず,その勧告に従わない場合には,勧告に従うように命令を受けます。(番号法51条1,項2項)
この命令に従わない場合には,2年以下の懲役叉は50万円以下の罰金(番号法73条)
イ 特定個人情報収集等の制限
マイナンバーを含む特定個人情報の提供の制限を受ける場合には,何人もマイナンバーを収集したり,保管することは認められていません。(番号法20条)
(ア)職権を濫用してマイナンバーを収集した場合ときは,2年以下の懲役叉は100万円以下の罰金(番号法71条)
(イ)特定個人情報保護委員会の命令に従わない場合には,2年以下の懲役叉は50万円以下の罰金(番号法73条)
2.マイナンバーの漏洩
(1)意図的なマイナンバーの漏洩
意図的な漏洩につては,「1.マイナンバーの提示」で見てきたとおりです。
(2)意図しないマイナンバーの漏洩の責任
この場合の本人の責任についての規定はないようです。
(3)マイナンバーが漏洩した場合情報流失のリスク
マイナンバーが他人に知られたとしても,具体的な不利益が発生することは通常はありえません。
①マイナンバーによる紐付け情報利用は行政機関に限定
マイナンバーを活用してそのシステムを運用し,情報の管理・利用・授受をおこなうのは行政機関に限定されます。
マイナンバーを使って情報に近づけるのは,原則として行政機関に所属する人間だけだということになります。
行政機関に属さない一般の人にマイナンバーを知られたとしても,それが直ちに情報流失につながるわけではありません。
②身分証明書の提示の要求
マイナンバーの本人であることを示す身分証明書を,マイナンバーとともに提示することになっています。
したがって,マイナンバーだけでは手続はできません。 マイナンバー制度は,従来、手続において必要とされていた住民票や所得証明が省略できるというメリットがある だけです。
以上のような点を考えると,マイナンバーが他人に知られたり番号カードを紛失しても,情報が流失する危険は少ないと思われます。
3.まとめ
マイナンバーを他人に教えた場合の本人の責任は限定的です。
また,マイナンバー漏洩による情報流失の危険も非常に限定的です。
とはいえ,政府のシステムに不正に侵入する者が現れないとは断言でず,一抹の不安をぬぐえません。また,行政機関の内部に不正な行為をおこなう者が出てこないとも限りません。
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