親の土地のうえに家を建て,親より先に家を建てた子どもがなくなった場合,その家に住んでいる配偶者や子どもは,家を撤去して出ていく必要があるのか。ということをこのブログで考えたことがあります。
参考ブログ:
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土地の使用料を払わずに親の土地のうえに家を建てて住んでいる娘夫婦は,親が死亡した場合にはその権利関係はどうなるのでしょうか。今回は,そのことを考えてみます。
1.親の死亡と親の土地の使用貸借
(1)使用貸借契約
親の土地をタダ(無償)で使わせてもらう契約のことを使用貸借契約といいます。特別に契約書を取り交わすことなく約束したものを黙示の使用貸借契約と呼んでいます。
子どもである娘は,親の土地を無償で借りる契約をしたという子となります。
(2)貸主の死亡と使用貸借契約
貸主である親が亡くなっても,無償で借りる契約が亡くなってしまうわけではありません。
使用貸借契約の契約期間は,通常は借主が死亡するまでとなっています。(借主の死亡による使用貸借の終了民法599条)
普通は,親の子である娘(借主)が死亡するまで,使用貸借契約は続きます。
2.親の土地の使用貸借における相続上の留意点
(1)遺産分割協議による底地の獲得
底地とは建物の建っている土地のことをいいます。
遺産分割協議において,自分の家の底地が自分に分割されないということが起こるかもしれません。
(2)特別受益の評価対象としての使用貸借権
使用貸借をしている娘は親から生前に使用貸借する権利を贈与されたことになり,通常は特別受益として遺産分割する財産の中に加えられます。
遺産分割する財産にその特別受益を加えなくてもよいという意向を親が表明することを,「被相続人の持戻し免除の意思表示」といいます。
3.使用貸借に関係する相続対策
使用貸借の借主の立場から相続対策を検討すると次のようになるのではないでしょうか。
(1)底地について
底地は評価が低くなる傾向がありますので,通常は遺産分割の対象としてほかの相続人が希望することはまれでしょう。ほかの相続人が希望したとしても,通常より低い価格に基づき自分の手持ちのお金を支払うことも可能となります。これを代償分割といいます。
(2)特別受益について
特別受益の持戻し免除の意思表示をしてもらうようにします。
(3)遺言書について
遺言書を作成してもらうのが一番確実の方法です。
底地については使用貸借権者(娘)に相続させると遺言を残してもらいます。
使用貸借権の特別受益については持戻しを免除する旨を遺言書に書いてもらいます。
(4)借地権契約,相続時精算課税について
遺言書を書いてもらうのが一番よいのですが,それが難しい場合は借地権契約を結ぶというのもひとつの解決策になります。
ただし,権利金の支払いがないときには娘へ権利金分を贈与したことになる場合がありますので,税務上の注意が必要です。
また,相続時精算課税の利用の検討なども有効ではないでしょうか。
相続時精算課税制度についてはこちらのブログを参照してください。
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4.まとめ
親の土地に自分たちが家を建てて生活をするということは,一般的に行われていますし,理にかなっている方法でもあります。
ただ,相続時にはそれが使用貸借の契約によるものなので,すこし注意が必要になります。
遺言を書いてもらう,それが無理であれば借地契約や相続時精算課税などの制度を利用することなどが考えられます。
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