ハンコ(判子)にまつわる名称は多く,その意味が紛らわしいものもまた多いです。
今回は主に個人のハンコについて見てみようと思います。
ちなみに,山梨県にはハンコで有名な六郷町があります。水晶細工からの歴史を持つ宝飾産業は山梨県の代表的な産業の一つです。
1.ハンコ(判子)にまつわる名称
思いつくまま並べてみます。
実印,認め印,銀行印,三文判,シャチハタ印,印章,印鑑,印顆,印形,印影の語が浮かんできます。
2.ハンコにまつわる基本的な要素(印形・印影)
ハンコにつて考えるに当たって基本的な二つの要素があります。
印形と印影です。
(1)印形(いんぎょう)
印形は印顆(いんか),印判(いんばん)とも言います。
文字が彫刻された木、牙(きば)、角、水晶、石、金属などの印材のことを言います。ハンコと言えばこれを指します。
(2)印影(いんえい)
朱肉を付けた印形を紙などについたときに,そのついた紙などに残る印形の跡(影蹟)のことを言います。
「印が逆さになっている」などと日常使う「印」のことです。
(3)押印(おういん)
捺印(なついん),押捺(おうなつ)とも言います。
印形に朱肉を付けて紙などの上に押して,その押した紙などの上に印影を残す行動を言います。
日常いうハンコをつくと同じ意味です。
3.印章(いんしょう)
日常語と法令用語ととしての意味が少し違うので注意が必要です。
(1)日常語としての印章の意味
印形すなわちハンコのことをいいます。
ハンコ屋も看板をよく見ると印章店となっています。
(2)法令用語としての印章の意味
日常的な使い方とは違い,印章は印影の意味で使われます。(民法970条1項2号)
刑法では,印章の意味として印影のほかに印形も指すという判例があるようです。
紛らわしいかぎりです。
4.印鑑(いんかん)
印鑑も印章と同様に日常語と法令用語の意味に違いがあります。
(1)日常語としての印鑑の意味
印形すなわちハンコ,日常語としての印章のことです。
「今日は印鑑をお持ちですか」という時の印鑑のことです。
(2)法令用語としての印鑑の意味
法令用語としての印鑑は印影を指します。印鑑証明のために届けてある印影のことをいいます。
印影(印を押した跡の形)と対照してその真否を確かめるためにあらかじめ官公署、取引先に差し出しておく印影[有斐閣 法律用語辞典 第4版]
(3)印鑑登録・印鑑証明の法的根拠
印鑑証明の根拠法令を調べてみましたが,見つかりませんでした。
各市町村の自治事務として地方自治法第2条第3項に定められている「市町村が行う事務」に該当すると思われます。
私の住む山梨県甲府市の印鑑条例は次のページにあります。「
シャチハタ印の禁止などがこの条例の中にあります。
(4)実印・認め印
①実印
印鑑証明のために印影が届け出てある印形(ハンコ)のことです。
②認め印
実印以外のすべての印は認め印ということになります。
すなわち,銀行印,三文判,シャチハタ印などのことです。
5.まとめ
ハンコと印鑑は日常使う言葉としては,同じものを指します。
法令用語としては,ハンコと印鑑は別のものを指します。
ハンコに関する用語は混乱しています。意味が通じればそれでよしとしても日常生活に困ることはありません。
それより,注意が必要なのは,必要もないのに押印しないということです。
実印・三文判にかかわらずその効力は変わらないと思うべきです。
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