船舶の遭難というとなんと言ってもタイタニック号の遭難が有名ですね。
死亡者:1517人,生存者:706人だったと言われています。
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このような緊急時においての遺言について考えてみます。
1.遺言の方式
遺言の普通の方式については皆さんがよくご存じのとおりです。
普通の方式以外に,特別の場合の方式も民法は定めています。
(1)普通の方式(民法967条)
①自筆証書遺言
②公正証書遺言
③秘密証書遺言
(2)特別の方式
①死亡の危急に迫った者の遺言(民法976条)
②伝染病隔離者の遺言(民法977条)
③在船者の遺言(民法978条)
④船舶の遭難者の遺言(民法979条)
2.船舶の遭難者の遺言の方式
今回は特別の方式のうち,船舶遭難者の遺言についてみてみます。
(1)民法979条(船舶の遭難者の遺言)
①船が遭難した場合,死亡の危険が迫った人は,二人以上の証人の立会のもとに口頭だけで遺言をすることができます。(1項)
②口がきけない人は,通訳人の通訳によって遺言をします。(2項)
③証人がその遺言の趣旨を筆記して,これに署名・押印する。証人のひとり又は利害関係人が家庭裁判所に請求をして,その確認を得る。(3項)
④家庭裁判所は,遺言が遺言者の真意からでてものであるとの心証をえなければ,確認できない。
(2)特殊状況を勘案しての方式の厳格さの緩和
①証人は2名でよい
②口頭での意思表示だけでよい(口がきけない人は通訳人の通訳)
③証人はその場ではなく,危難が去った後に記憶に従って,証書を作成してもよい。遺言者の署名押印は不要です。
④署名・押印もその場でする必要はなく,また,署名又は印を押すことのできない証人がいるときは,証人はその事由を付記する。
⑤病気その他の理由でその人だけが死にそうな場合に限らず,乗船者全員が危険な状態の場合にも,この船舶遭難者の遺言の方式で遺言をすることができます。
⑥死亡の危急に迫った者の遺言(民法976条)のような遺言者,証人への読み聞かせあるいは閲覧,筆記の正確さの承認は求められていない。
(3)船舶遭難者の遺言の効力
遺言者が普通の方式によって遺言することができるようになったときから,6ヶ月間生存するときには,効力を生じません。
3.まとめ
タイタニック号の遭難のような場合に遺言をしたければ,証人二人を見つけて,口頭で遺言を伝えればよいのです。
規定は規定として,死亡の危険が迫っている中で,遺言を残そうと考えたり,遺言の証人を引き受ける余裕がある人がいるのでしょうか。この条文を読むたび疑念が湧いてきます。
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