1.遺言と遺留分
(1)遺言による死後の財産処分
自分の財産を自分が死んだあと誰にあげるかは, 原則として自分の自由です。具体的には,遺言を残すことによって死後の財産処分を行うことになります。
(2)遺留分
たとえば,家族とは縁もゆかりもない自分が親しくしている女性に,すべての財産を譲ると遺言を書くことはできるのでしょうか。
遺言に書くことはできます。しかし,遺言者の親などの直系尊属,配偶者,子どもなどの直系卑属から遺留分を自分に渡すように請求されると,一定の割合を請求してきたその相続人に渡さなければなりません。(遺留分減殺請求)
遺留分とはこのように一定の相続人のために法律上必ず残しておかなければならない遺産の一定割合のことを言います。(民法1028条 遺留分の帰属及びその割合)
(3)遺留分の放棄
相続人は相続によって期待できる最少限度の相続分(遺留分)を放棄することはできるのでしょうか。
遺留分の放棄は可能です。相続が発生する前の放棄かあとの放棄かによって手続が違ってきます。(民法1031条 遺贈または贈与の減殺請求)
ア 相続が発生する前の遺留分放棄
生前に相続の放棄をしようとするときには,家庭裁判所の許可を得る必要があります。
裁判所は次のような観点から遺留分放棄の許可の判断します。
①遺留分放棄が遺留分権利者の自由意思によるか。
②遺留分放棄する理由が合理的でありその必要があるか
③遺留分放棄に対する代償があるか
注意:家庭裁判所の許可を得た遺留分放棄の取消し
原則として取消しはできません。(家事事件手続法78条 審判の取消し又は変更)
イ 相続発生以後の遺留分の放棄
遺留分放棄に家庭裁判所の許可は必要ありません。遺留分による減殺請求をしなければ,遺留分を放棄したことになります。
相続人が自分の遺留分が侵害されていることに気づいても,特別に文句を言わなければ,それでよいわけです。
2.遺留分放棄と相続権
(1)遺留分放棄がある相続権
遺留分を放棄しても,相続権を放棄したことにはなりません。
遺留分を放棄することは,相続を放棄することとは直接関係しません。遺留分放棄は自分の遺留分を下回る相続財産しか遺言で残されなくても,異存はありませんという意思表示です。
したがって,遺言が残されていない場合,遺言で遺留分以下の財産が指定された場合において,当然に相続を受けることができます。
(2)遺留分放棄がない相続権
遺留分放棄がされていない場合は,自分の遺留分が侵害されているときには,自分の遺留分を最低限度の受取額として要求することができます。
したがって,遺言の内容が遺留分額を下回っているときには,遺言にかかわらず遺留分額を要求することは可能です。
3.まとめ
遺留分権とは,自分の相続額が自分の遺留分が侵害されている場合には,自分の遺留分額は最低いただきますと主張できる権利のことです。
遺留分の放棄とは,その権利は主張しませんと言うことです。したがって,相続できるものがある場合は,その相続権にしたがって相続ができることになります。
遺留分を放棄している場合の相続権を「遺留分のない相続権」といいます。
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