1.複数後見人
(1)後見人の数
成年後見人の数に制限はありません。また,成年後見人は個人に限定されることなく,法人も成年後見人となることが可能です。
後見開始後の後見人を追加することができるという規定は民法843条3項にあります。
後見開始当初の複数成年後見人について直接規定する条文はありませんが,後見開始の当初から複数の後見人を選任することができると考えられています。
「家庭裁判所は,必要があると認めるときは」複数の後見人を選任することができます。
(2)家庭裁判所が必要があると認めるとき
具体的には次のような場合です。
①財産管理と身上監護を分担するとき
②本人が住んでいるところと財産のあるところが離れているとき
③財産の種類が多く,また多額のとき
④未成年者の親権者が成年後見人となるとき
⑤高齢の親と親亡き後の支援を託される者が成年後見人になるとき
⑥高齢の配偶者後見人とその後の後見を託される者が後見人になるとき
(3)複数後見人の組み合わせパターン
①複数の親族後見人が選任されるもの
②親族後見人と専門職後見人が選任されるもの
③複数の専門職後見人が選任されるもの
2.複数後見人の権限(民法859条の2第1項)
(1)権限の原則
原則として,それぞれの後見人が独立して成年後見人の職務を行います。
この場合,それぞれの後見人が矛盾する法律行為をする場合が考えられます。
(2)共同権限行使
共同権限行使とした場合には,複数の成年後見人が全員一致で法律行為をする必要があります。
一部の成年後見人が死亡した場合や,解任・辞任などで欠けた場合には,他の成年後見人だけでは後見人の仕事を有効にすることができないという事態が想定されます。
共同権限,次項の権限分掌が家庭裁判所の審判よって定められると,そのことが登記されます。成年後見登記全部事項証明書に明示されます。
(3)権限分掌
権限分掌とは成年後見人の仕事を個々の後見人に振り分けて,役割分担の下に後見支援を行うことをいいます。
たとえば,親族後見人に身上監護に関する後見の仕事を,専門職後見人に財産管理に関する後見の仕事を振り分けて役割分担をさせます。
実際の後見事務(後見の仕事)においてそれを分けることは困難であることが指摘されています。
また,一人の後見人が欠けると,他の後見人では欠けた後見人の後見事務を代わりに行うことができません。そのため,後見の支援に支障をきたすことがでてきます。
3.複数後見人の報酬
(1)単独・複数後見人の報酬額
後見人に支払う報酬の額は,単独後見人であっても,複数後見人であっても被後見人が負担する額は同じです
複数人で後見を行った場合には,それぞれの後見人の負担する事務の内容に応じた割合でそれぞれの後見人に報酬を支払います。後見人の人数が増えると支払う報酬の額もそれに応じて増えるということはありません。
(2)成年後見人の標準的報酬額の目安
家庭裁判所が行う報酬付与の申立てに対する審判の標準的報酬額が家庭裁判所によって公表されています。
以下のブログを参照してください。
参照ブログ:
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4.まとめ
①成年後見人が単独でなく,複数になると後見人の権限が複雑となります。
②単独の後見にするか複数の後見人にするかは家庭裁判所が判断をします。
③後見人が複数になったとしても,後見人に支払われる報酬額は単独後見人の場合と同額で,増えることはありません。
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