1.遺言適格事項
(1)遺言適格とは
遺言によって法的効果が発生する事項は法律で決められています。遺言適格事項といいます。
「兄弟仲良く暮らすように。」というような精神的な事柄は遺言適格事項とはなりません。また,法律的に意味のあることでも,法律で決められていないことは遺言適格事項ではありません。
(2)遺言適格とされる事項
ア 家族法関係
①認知請求(781条)
②未成年後見人・未成年後見監督人の指定(839条・848条)
イ 相続法関係
①推定相続人の廃除・取消し(893条・894条)
②祭祀財産承継者の指定(897条1項ただし書き)
③相続分の指定(902条)
④遺産分割方法の指定(908条)
⑤相続人の担保責任の指定(914条)
⑥遺贈(964条)
⑦遺言執行者の指定(1006条)
⑧遺留分減殺請求方法の指定(1034条ただし書き)
(『民法講義Ⅶ 親族法・相続法』近江幸治,誠文堂,2010年)
参考ブログ:「 」
2.遺言と代理
「遺産の分割についてすべて長男にまかせる。」という遺言は有効でしょうか。
(1)第三者に委託できるとされている遺言適格事項
遺言をする人(被相続人)が遺言において第三者に委託できる事項は,相続分の指定(902条)と分割方法の指定(908条)だけです。
(2)遺言の制度の趣旨
遺言は,相続の法定原則を修正する被相続人の意思表示手段であると考えられています。できるだけ遺言者自身の意思を尊重しようという趣旨です。
(3)代理による遺言の適否
遺言適格事項・遺言の制度の趣旨からみて,遺言の内容をすべて第三者に委託することは適当ではありません。
また,法定相続人が第三者に当たるかという点についても疑問があります。
3.まとめ
遺言を実質的に丸投げをするような遺言は好ましくありません。
「誰に・何を・どれだけ・どのように」財産を継承するのかが特定できる内容での遺言が必要です。
055-251-3962 090-2164-7028
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