前々回になりますが,「
」という記事を書きました。今回はその続きです。1.代理遺言の可能性
(1)遺言による代理遺言
前々回のこのブログで見たように,代理人を立てて遺言を実現するのは法的には不可能だと考えられます。
(2)遺言代用信託による代理遺言
前回のブログで,遺言代用信託の紹介をいたしました。
その仕組みのなかにある「受益者指定権利者」を指定することによって,長男に遺言を丸投げすることに近いことが実現できます。
前回のブログ:「
」2.受益者指定権利者を指定した遺言代用信託
(1)信託契約に登場する基本的関係者
①委託者:受託者に財産を託して,その財産の管理・運用・処分をまかせる。
②受託者:信託契約に従って,受益者のために委託者から信託された財産を管理・運用・処分する。
③受益者:管理・運用・処分された利益を受託者から受ける。
(信託法2条,4項・5項・6項)
(2)受益者指定権利者
受益者指定権利者とは,受益者を指定・変更する権利を持つと信託契約によって定められている人のことをいいます。(信託法89条)
(3)受益者指定権利者の定めのある遺言代用信託
ア 信託の契約内容
遺言代用信託として次の契約を例として考えます。
委託者は長男に財産を信託して,委託者自身を委託者の生存中の受益者とします。
委託者死亡後の財産分与受益者の指定権利者として長男を指定します。
①遺言代用信託契約において,委託者の長男を受託者として契約を結びます。
②その信託契約に,受益者指定権利者を長男と定めます。
③受益者指定権利者の効力の発生時期は委託者の死亡時とします。
④さらに,次の条項を付け加えます。
「受益者指定変更権者である長男は、遺留分を侵害しない範囲で、任意に相続人から残余財産受益者等を選定し、これらの者に任意の判断で給付する財産を決めて引き渡しすることができる」
イ 契約例の効果
この契約例によれば,すべての残余の信託財産(遺産)の配分などの権限を長男に付与することができます。
委託者(被相続人)が遺言するとすときには,「誰を受遺者とするか」・「受遺者とした者への受遺財産を具体的にはどれにするか」・「それぞれ受遺者の相続割合をどうするのか」などを決めなければなりません。その判断を先延ばしにして,長男に委託することが可能となります。
この記事を書くに当たって次の記事を参考にさせていただいています。
「 」弁護士遠藤英嗣氏。
3.まとめ
遺言代用信託契約を利用することによって,民法では困難だとされる「代理による遺言」を実現することが可能になると言えます。
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