相続時精算課税制度を利用すると相続放棄ができないのではないかという不安を持つ人が多いようです。以前にも相続時精算課税について書いたことがありますが,改めて相続放棄との関連について取り上げてみたいと思います。
1.相続時精算課税制度
(1)相続時精算課税制度の概要
相続時精算課税制度とは,「原則として60歳以上の父母又は祖父母から、20歳以上の子又は孫に対し、財産を贈与した場合において選択できる贈与税の制度」です。詳細は下記の国税庁のペーをご覧ください。
国税庁:
私の以前のブログの記事:
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(2)生前贈与の課税方式
贈与がおこなわれると原則として贈与税を支払わなければなりません(相続税法21条)。しかし,一定の条件を満たす者が生前贈与を受けた場合には,贈与時ではなく贈与者が死亡したときに相続税として精算するという課税の特例が設けられています。(相続税法21条の9から21条の18)
2.生前贈与と法定単純承認・詐害行為
(1)生前贈与は法定単純承認の原因となるか
相続時精算課税を選択をすると相続放棄ができなくなると心配する理由の多くは,相続時精算課税の選択が相続財産の処分に当たるのではないかという心配ではないのでしょうか。
生前におこなわれる贈与の元になる財産は相続財産ではありません。したがって,法定単純承認の場合には当たりません。(民法921条)
たとえば,父親に生前に土地をもらえば,それは父親から贈与を受けたことになります。しかし,父親の相続財産を相続人である子が処分したという法律関係ではありません。
(2)生前贈与と詐害行為
多額の負債を抱え債務超過に陥っていることを知った上で、相続人と示し合わせて全部の財産を相続人へ生前贈与したようなケースなどの権利濫用が考えられます。
このような場合については,詐害行為取消の対象となるため、贈与が取り消される可能性があります。(民法424条)
この問題は,相続時精算課税制度とは直接関係のない事柄です。
3.まとめ
相続時精算課税を利用していても,法定単純承認とはならず,相続の放棄ができます。
相続時精算課税の利用にかかわらず,単純承認,限定承認,相続の放棄ができることになります。(民法915条)
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